ジャズサックスプレイヤー アート森のつぶやき Vol.15 晩年のアート・ペッパー

ジャズサックスプレイヤー アート森のつぶやき Vol.15 晩年のアート・ペッパー

皆様、こんにちは。 ジャズサックスプレイヤー アート森でございます。

最近はきかれなくなりましたが、「アート森と名乗っているけど、何からとったのですか?」と、かつてはよくきかれたものです。

「芸術家だから?」

いや、これはありがたいお言葉。

「引越屋?」

いや~、20代の頃は、これが一番多かったなあ(爆)。

私がアート森と名乗りだしたのは20歳の時です。

当時、東京外国語大学 ジャズ研究所の部員だった私は、何をとちくるったか…ベーシストの先輩に森さんがいたので、区別がつくように、ステージネームをつけよう!と思い立ったのです(爆)。

で、なんで、アート・ペッパーだったの?

東京外国語大学 ジャズ研究所に入部。

当時、キャンパスの芝生で、新入生歓迎があった時です。

2年上の先輩、アルトサックス奏者です。

「お前はアルトをやっとっといて、アート・ペッパーも知らんのか!?」といきなり説教を食らったんです。

アート・ペッパー?

アート・ペッパーって、そんなに凄い人なの?

で、当時、貧乏学生だった私は、今は死語となった「貸しレコード屋」でアート・ペッパーのアルバムを借りたのです。

これがね。ふつ~だったら、このアルバムに99%の人は行きますよね。初めて、アート・ペッパーを聴くならこれ!というのがありますよね。

『Art Pepper Meets the Rhythm Section』

しかも、アルバム1曲目だけが異様に有名な『You’d Be So Nice to Come Home To』。

ですが、私が借りたのは、1977年に日本のレーベル(当時のトリオレコード)がプロデュースしたアルバムだったのです。

『Among Friends』(邦題:再会)

なので、私が最初に聴いたアートは、復帰後の「晩年の演奏」だったのです。

それからです。

私はアート・ペッパーを聴きまくりました。

もちろん、『Art Pepper Meets the Rhythm Section』も。

なのですが、どういうわけか、晩年のアルバムばかり、次々と聴いて行った自分がいました。

多分、当時のスイングジャーナルの広告の影響でしょうな(爆)。

ジャズファンの間では「50年代のウエストコースト時代の洗練された流麗なペッパーが好きだ」という人と、「復帰後の鬼気迫るペッパーが好きだ」という人で好みが分かれます。「若い頃は良かったけれど、晩年は荒すぎる」という声も未だに耳にします。

個人の好みの問題ですから、どうこう言うつもりはありません。

ですが、アートが亡くなった齢(56歳)を超えて、ジャズサックスプレイヤーとして活動を続けている今、晩年のアートが『ジャズ批評』のインタビューでこう答えていたのが、改めて、心に染み入るんですね。

「車でも’38年型のと現在のとでは、当然違いがある。たとえばキャデラックのような高級車も、その当時と今とでは全然違っている。同様に、昔の私と現在の私とは別物なのです。」

動画や音源で昔の演奏を見聞きしたあとに、こんな質問をされることもあります。

「なぜアルトが好きなのですか?」

ペッパーはこう答えていました。

「演奏するのが難しいからです。私はテナーも、あまり吹かないけど、できる。アルトに比べれば、テナーは非常に簡単です。とにかくアルトは一番難しい。」

先日、ふと10年前(2016年)に自分のカルテットで演奏したライブ音源を聴き返す機会がありました。

我ながら勢いがあり、怒濤のスタミナで音を敷き詰めている。……思わず「おいおい、昔の俺、スタミナあるなぁ」と、今の自分と比べて少し苦笑い混じりの溜息が出てしまいました。

サックスを吹いて49年。身体の衰えやスタミナの変化には、どうしても抗えない瞬間があります。

長々と書き連ねてしまいましたね。

今年でジャズサックスプレイヤー49年目になる私ですが、アートの言葉がまた一段と深くしみいるようにはなったかな?と思います。

今日のところはこんな感じで。

【本日の音源紹介】

Round About Midnight / Art Pepper (Album: Among Friends)

バックナンバーはnoteマガジンをご覧ください。

https://note.com/fast_poppy8050/m/mf023e70af1b7

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